妊婦が巻く腹帯にセンサーや電極を埋め込み、早産など異変の兆候を見つける〈ハイテク岩田帯〉の開発に、奈良県立医大などが取り組んでいる。
母子の体調を示すデータをインターネットで病院に送り、データをもとに医師がいつでも診断できる仕組みで、数年のうちに実用化させたい考え。産科医の不足する地域では朗報となりそうだ。
2006年、出産時に意識不明になった同県内の女性が転院先が決まらず死亡した問題を機に、県立医大の小林浩教授(産婦人科学)らが「安心して出産できる医療体制を」と、08年から開発を始めた。
腹帯は布製で、付属する電極で胎児の心拍数を測り、圧力センサーで子宮の収縮状態をチェックする。計測データは、自宅のパソコンで専用ソフト「電子母子手帳」を起動すれば、腹帯から無線通信を通じて自動的に記録され、妊婦が自ら体調などについて入力した内容とあわせて、病院などのサーバーに送信される。
主治医には、出産の兆候や早産の恐れがわかるほか、緊急時は自動的に簡易型携帯電話(PHS)に連絡され、妊婦を指導することができる。自宅に向かう救急車の中でも医療従事者らがデータを確認できるという。
システムは3月に完成させ、妊婦による実証実験を経て、国に医療機器として認可を申請する予定。将来は携帯電話でも電子母子手帳を使えるようにする。
小林教授は「離島や山間地の妊婦にも使ってもらい、早産の危険性をゼロに近づけたい」と話している。(2011年1月10日12時30分 読売新聞)